喘息の症状

喘息の原因

喘息のタイプ

喘息には多様な原因や悪化因子、臨床像があります。それぞれの特徴や傾向にあった治療や指導が行われます。

1.アトピー型・非アトピー型

アトピー型はダニやペットなど、アレルギーの元となる物質(アレルゲン)によって悪化します。子どもの喘息の多くがこのタイプです。
非アトピー型はアレルギーとは関係なく発症します。多くは成人(40歳以上)で発症します。

2.その他のタイプ

発症年齢別、性別、季節性、肥満、アスピリン喘息、運動など、患者によって原因は個々に異なり、それぞれの原因別にタイプを分けて評価します。

喘息の原因

●喘息の主な原因と対策 1) 4)

日常生活において、喘息の発症や悪化につながる原因にはさまざまなものがあり、また小児と成人、患者によってそれぞれ原因が異なります。季節や気象、時間帯など環境の変化で起こるものや、肥満やストレスといった個人の性質が関わるものがあります。このため、以下の原因は、すべての患者に当てはまるものではありません。

〈アレルギー〉

原因:
アレルギーを起こす物質(アレルゲン)の中でも、ダニ、カビ、ペットのフケや毛などが発症に関わっています。何がアレルゲンであるかも、患者によって異なります。
対策:
・ダニやハウスダストが原因の場合、こまめな床掃除(掃除機がけ)が大切です。また寝具類はダニのすみかになるため、入念に掃除機がけをします。
・カビが原因の場合、湿度が高いとカビが発生しやすくなります。室内は換気し、観葉植物は避け、エアコンや洗濯槽は定期的に洗浄しましょう。
・ペット(犬や猫など)の毛やフケ、唾液などが原因の場合、飼育しないのが原則です。すでに飼育している場合は、室内やケージの掃除、シャンプーやブラッシングをこまめに行い、寝室を分けましょう。空気清浄機も一部有効です。

〈ウイルス感染〉

原因:
呼吸器感染症は、気道の粘膜に炎症を起こし、炎症部位の気道バリアが破壊されることで、喘息の症状を悪化させる原因になります。
対策:
・外出時にマスクをし、できるだけ人混みを避けます。外出後の手洗いとうがいも忘れずに。予防できる感染症は、ワクチンで予防します。

〈たばこ〉

原因:
たばこの煙には、4,500種類以上もの化合物が含まれています。これらの物質は、過敏な気道に影響を与え、喘息を悪化させる原因になります。喫煙者自身への影響はもちろん、副流煙(着火したタバコの先から出ている煙)は周囲の患者にも影響を与えます。特に両親、なかでも母親)の喫煙による受動喫煙は、子どもの喘息発症および悪化に影響を強く与えることが分かっています。
対策:
・症状が落ち着いている時であっても、禁煙が原則です。
・子どもが喘息の場合、家族(親)や周囲の禁煙が原則です。

〈肥満〉5)

原因:
おなかの内臓脂肪によって横隔膜が押し上げられ、呼吸機能が低下します。さらに、脂肪細胞が分泌する物質によって、気道の炎症が進み過敏性が増します。また上気道(鼻から喉にかけて)が狭くなり、睡眠時無呼吸症候群(SAS)を合併する傾向が高まります。SASによるストレスは、喘息の悪化因子となります。
対策:
バランスの良い食事や適度な運動習慣を身に付けて、健康的に減量を行います。

〈過労・ストレス〉

原因:
過労や心理的なストレスは、喘息の発症や悪化を引き起こします。睡眠不足などで疲れが取れない状態が続いたり、日常生活やライフイベント(進学・就職・結婚・出産など)での心理的な負担が大きいと、急性増悪(発作)の頻度が高くなったり、症状がコントロールしにくい状態になったります。
対策:
無理をせず、十分に休息を取って心身を休めましょう。

〈大気汚染(屋内・屋外)〉6)

原因:
屋内外の空気を汚染する物質が、急性増悪(発作)を起こしやすくします。屋内の物質としては、暖房器具による窒素酸化物や一酸化炭素、建材・壁紙などの接着剤や合板から発生するホルムアルデヒドがあります。屋外の物質としては、黄砂やPM2.5、産業スモッグ、光化学スモッグ、自動車の排気物質などがあります。
対策:
・屋内ではこまめに換気を行い、暖房機器機はパネルヒーターなど空気を汚染しないものを選ぶと良いでしょう。
・屋外では、外出時にマスクをします。大気汚染注意報など大気汚染物質の濃度が高い時はできるだけ外出を控えます。

〈気温・気圧〉

原因:
気温や気圧の変化、雷雨などの気象によっても、症状が悪化します。
対策:
特に症状が落ち着いていない場合は、気象予報などを参考にし、できるだけ外出を控えます。

〈アルコール〉6)

原因:
体内でアルコールが分解する際、アセトアルデヒドが発生します。日本人には、これを分解する酵素が欠けていたり不完全な人が多いといわれており、飲酒をすると顔や体が紅潮したり動悸が起こります。また気管支の粘膜もむくむため、喘息の症状が悪化することがあります。
対策:
飲酒は控え、飲酒の機会がある場合には医師に相談しましょう。

〈薬物〉

原因:
患者さんの中には、特定の薬物(アスピリンなど、非ステロイド系抗炎症薬)によって喘息症状が誘発される場合があります。市販のかぜ薬や頭痛薬、解熱剤などにも、広範囲に含まれている可能性があるので、病院の受診や薬剤師へ相談した上で薬を選んでください。

【出典】

1) 一般社団法人日本アレルギー学会 喘息ガイドライン専門部会 監修: 喘息予防・管理ガイドライン2021. 2021. 協和企画

4) 足立満: ぜんそく 正しい治療がわかる本. 2011(第2版)

5) 倉原優: 喘息バイブル 成人喘息を診療するすべての人へ. 2020(第2版). 日本医事新報社

6) 独立行政法人 環境再生保全機構HP「成人ぜん息の基礎知識」https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/control/measures/lifestyle.html